新生活で増えるお口のトラブルとは?4月に始めたい予防習慣
4月の新生活こそ、お口の健康管理を始めるベストタイミングです
忙しい春に増えやすい「むし歯」「歯ぐきの腫れ」を防ぐために
4月は、入学、就職、転勤、引っ越しなど、生活リズムが大きく変わりやすい時期です。朝の支度が慌ただしくなったり、食事の時間が不規則になったり、疲れがたまりやすくなったりすると、毎日続けていたはずの歯みがきやセルフケアも乱れやすくなります。こうした小さな変化は、お口の中ではむし歯や歯肉炎、歯周病のリスク上昇につながることがあります。特に歯と歯の間や歯ぐきのきわは磨き残しが出やすく、忙しい時期ほどトラブルが表面化しやすい場所です。 
実際、厚生労働省の資料では、**過去1年間に歯科検診を受けた人の割合は58.0%**にとどまっており、歯や歯ぐきに違和感があっても受診が後回しになりやすい現状が示されています。また、令和4年歯科疾患実態調査では、歯周ポケットが4mm以上ある人が一定割合みられ、若い世代でもゼロではないことが示されています。つまり、歯周病は年齢を重ねた人だけの問題ではなく、生活の乱れやセルフケア不足が重なることで、どの世代にも起こりうる身近な疾患です。 
新生活の時期に起こりやすいのが、「朝は急いでいて軽く磨くだけ」「昼は外食でそのまま」「夜は疲れて寝てしまう」といったパターンです。お口の中では、食後に残った糖質をもとに細菌が酸をつくり、歯の表面を溶かす“脱灰”が起こります。一方で、唾液にはその状態を修復する“再石灰化”を助ける働きがあります。ところが、だらだら食べや間食が増えたり、就寝前の清掃が不十分だったりすると、歯が修復されにくい環境になり、むし歯のリスクが高まります。日本歯科医師会でも、就寝前のセルフケアの重要性や、歯ブラシに加えて歯間清掃具を使う必要性が案内されています。 
では、4月にまず見直したいポイントは何でしょうか。
最初に意識したいのは、「完璧を目指す」より「毎日崩さない」ことです。1日3回丁寧に磨ければ理想的ですが、現実には難しい日もあります。その場合でも、夜だけは丁寧に磨くことが大切です。日本歯科医師会は、就寝中は唾液が減って細菌が増えやすくなるため、夜のセルフケアがとくに重要だとしています。夜の歯みがきでは、歯ブラシだけで終わらせず、歯と歯の間の清掃も加えることで、翌朝のネバつきや口臭の改善にもつながりやすくなります。 
次に見直したいのが、歯みがき剤の選び方です。むし歯予防では、フッ化物配合歯磨剤の使用が広く推奨されています。日本歯科医師会は、年齢に応じた適切なフッ化物濃度と使用量の歯磨剤を使うことで、むし歯予防効果が期待できるとしています。また、日本小児歯科学会など4学会の合同提言でも、フッ化物配合歯磨剤の利用方法が整理されており、子どもだけでなく成人でも日常的な使用が重要とされています。大人の場合は、歯みがきの“有無”だけでなく、何を使って、どう使うかも予防効果に関わります。 
さらに、歯ブラシだけでは歯垢を十分に落としきれないことも知っておきたい点です。日本歯科医師会の一般向け情報では、丁寧に磨いても歯ブラシだけでは磨き残しが出やすく、デンタルフロスを併用することで歯垢除去率が高まると紹介されています。歯間が狭い方にはフロス、歯間が広い方には歯間ブラシが向いており、合わない器具を無理に使うと歯ぐきを傷つけることもあるため、自分に合った器具選びが大切です。ホームケアを頑張っているのにむし歯や歯ぐきの炎症を繰り返す方は、道具が合っていない可能性もあります。 
新生活のストレスも、お口の健康には無関係ではありません。疲れがたまると唾液が減って口が乾きやすくなったり、食いしばりや歯ぎしりが強くなったり、清掃がおろそかになったりしやすくなります。歯周病は、歯の表面の細菌による炎症だけでなく、喫煙や糖尿病、口腔乾燥などさまざまな要因が関係するとされており、生活全体の影響を受けやすい病気です。歯ぐきの出血や腫れは「少し疲れているだけ」と見過ごされがちですが、早い段階で見つけてケアを始めることが重要です。 
とくに注意したいサインは、歯みがきのときに血が出る、口臭が気になる、歯ぐきがむずがゆい、歯がしみる、食べ物が詰まりやすいといった変化です。こうした症状は、初期の歯肉炎やむし歯、詰め物の不適合、歯周病の進行など、さまざまな原因で起こります。初期の段階では痛みが少ないことも多いため、「痛くないから大丈夫」と判断せず、違和感のある時点でチェックするのが大切です。歯石は歯ブラシでは落とせず、歯科医院での除去が必要とされています。 
4月は、「今年こそ定期的に歯科医院へ通おう」と習慣を作り始めるのに適したタイミングでもあります。年度の切り替わりは、健康診断や生活習慣の見直しを意識しやすい時期です。お口のトラブルは、症状が出てから対処するより、問題が小さいうちに見つけて管理した方が、治療の負担も通院回数も抑えやすくなります。日本歯科医師会でも、日々のセルフケアに加えて、歯科医院で自分に合った清掃方法や補助器具の指導を受けることが勧められています。 
当院でも、むし歯や歯周病の治療だけでなく、新生活に合わせたセルフケアの見直しや、歯ブラシ・フロス・歯間ブラシの選び方のご相談を行っています。毎日しっかり磨いているつもりでも、磨き方の癖や磨き残しが続く場所は人それぞれです。ご自身に合った方法が見つかると、予防はぐっと続けやすくなります。春からの新しい習慣として、お口の健康管理も始めてみませんか。 
松林歯科 院長 松林忠敏
記事監修 医療法人松林歯科 院長 松林 忠敏
略歴
- 1987年
城西歯科大学卒業 歯科医師免許取得
- 1989年
スウェーデン・イエテボリ―大学内ブローネマルククリニックにてオッセオインテグレーション・インプラント・コース受講
- 1992年
千葉県習志野市にて開業
- 1996年
アメリカ・ボストン・シンポジウム参加
- 1996~1999年
ブローネマルクオッセオインテグレーションセンター東京(BOC)にて非常勤勤務
- 1997~2003年
アメリカ・サザンカリフォルニア・デンタル・セミナー参加
- 1998年
カナダ・マギール大学主催エステティック98参加
- 1998年12月
医療法人社団泰照会理事長に就任
- 1999~2003年
スウェーデン・ブローネマルクオッセオインテグレーションセンターにてセミナー参加
- 2004年
アメリカ・カリフォルニア州ロマリンダ大学医学部
分子生物遺伝子工学センター客員研究員として赴任 - 1992~2004年
医療法人社団泰照会理事長、コスモス歯科クリニック・津田沼南歯科両院院長歴任
- 2005年
東京都渋谷区にて松林歯科開院 現在、松林歯科院長